Evergreen Dazed
PART 3:エル時代&総括
Me
and a Monkey on the Moon(「モンキー・オン・ザ・ムーン」)
(10th&Last アルバム)
FELTのラストアルバムにして全キャリア中の最高傑作。異論はあるかも知れませんがやはりこれを最高傑作と呼びたい.。10年間ローレンスが自分の音を探し続けて最後に辿りついた地点。これを最高傑作と呼べないのならFELTのファンをやってきた意味がないじゃないか。
このアルバムの発表にあたりFELT解散も発表。これを最終作とすることを決めて製作に掛かったのだと思います。久しぶりの全曲ローレンスの作詞・作曲。インスト無し。歌詞がまた明らかにラストアルバムであることを意識したものとなっていて泣かせます。
1曲目「I Can't Make Love To You Anymore」のイントロ、そしてローレンスの歌声。あまりにも優しい音。ここまで優しいFELTってこれまであっただろうか。ラストアルバムと知って聴くからそう聞こえるのかも知れないけれど、何の迷いもなく達観したローレンスの姿がここにあります。そう、このアルバムのFELTって凄くストレートなのです。音も歌詞も。それがかえって泣かせます。ローレンスの声にかぶさる愛らしい女声はローズ・マクドウェル(ex.
Strawberry Switchblade, Death in June etc.)。この曲だけでも十分過ぎるくらいに素晴らしい出来。
「Free」ではCherry Red時代の盟友モーリス・ディーバンクへ向けたと思われる言葉も出てきます。
古い友達に会いに行こうと思う/もう何年も会っていないのだけど
僕らは一緒に曲を書きバンドをやっていた/本当はあいつの好みの音じゃなかった
だからあいつはバンドをやめてしまった
だけど僕は今でもここにいる
直接ディーバンクの名前を出しているわけではないしひょっとするとローレンスは全くのフィクションとしてこの詞を書いたのかも知れない。けれどファンとしてはやはり思い起こさずにはいられない。もちろんクリエイション時代のFELTも素晴らしかった。けれどチェリーレッド時代に素晴らしいアンサンブルを奏でてくれたギタリストのことを。
そして「New Day Dawning」。FELTを愛し続けて来た者に対してこれほど感動的な曲はないだろう。
そして...なんて素敵な朝/おはよう、を君に/君のために
壮大なパレードに加わり/この新しい日を祝おう
おはよう、を君に/君のために
来るべき10年に向けて/僕が開いた小道を歩こう
一緒に90年代へと
最後にこの曲を発表した曲によってFELTというバンドが80年代で活動を終えたことに意味を持たせることが出来た。ファンとしても十分に納得の行く選択。そう、僕らもローレンスと一緒に90年代へ踏み出していこう。何も恐れることはないんだ。ただ、今まで来た道をゆっくりと、足下を確かめながら歩んでいこう。
「ラストアルバム」を意識して制作したからこそのファンへの感謝声明。もう何に対しても闘う必要はない。そこにあるのはただただ安らぎの世界。レイドバックという言葉は70年代アメリカンロックに対して使われることが多いけれどもこのアルバムが80年代ネオアコシーンにおけるレイドバックの名盤だと思う。
最終作はelから。
唯一残念なのはローレンスが今作ではボーカル専念でギターを弾いていないこと。彼のギターも聴きたかったな。
かねてからの声明通りこのアルバムを最後にFELTは解散しました。FELTが音楽シーンに何か大きな功績を残したのかと言えば多分大したことはしていない。彼らがいなくても80年代の英国音楽はその価値を落とすことは無かったと思います。ただ、彼らの音楽を愛した人は僕を含めて世界中に何人かはいただろうし、そういった人達にとっては彼らは永遠に色褪せることのない輝きを持ち続けていた。だから、僕にとっては常に永遠であり続ける素晴らしいバンドなのです。
FELT解散後、ローレンスはDENIMというバンドを結成。今度は80年代的なエレポップで再登場しました。商業的にはまたしても全く振るいませんがFELTのファンを失望させるような内容ではありませんのでファンなら追いかけて損はないでしょう。
マーティン・ダフィーは泣く子も黙るPrimal Screamのキーボーディストとしてバリバリに活躍中。FELT時代には見られなかったブギウギなピアノプレイも披露。この人は多分もっとライブとかやりたかったんでしょうね。
モーリス・ディーバンクは数年前にSaint Etiennneの曲に参加していたそうです。詳細不明。
8thアルバムでメンバーだったミック・バンドはMexico
70というネオアコバンドで奮闘中。
その他のメンバーについては情報無し。ご存じの方、是非情報をお願いします。
(以下、2000年6月6日加筆)
ようやく丸1年かけてFELTの全時代のディスコグラフィーを完成させることが出来ました。これもひとえに応援してくださった方々のおかげです。心より御礼申し上げます。後記と言うには大袈裟ですが、「Evergreen
Dazed」に携わった1年の間に非常に印象深かったことが2点ありますので、その点について少し触れたいと思います。
一つはBelle & Sebastianというバンドに出会ったことです。前からその存在は知っていたものの特に興味を持っていたわけではありませんでした。ところが偶然にも拙HPの掲示板を通じ同バンドとFELTとの関連を知り試しに聴いてみたところ、あまりの素晴らしさに絶句したのでした。確かにメンバーの人はFELTからの影響を公言してはばかりませんし、またその音世界もFELTに通じるものがあります。しかしBelle
& Sebastianの奏でる音はともすればFELTよりも美しいとさえ思える瞬間が多々あります。FELTというバンドそのものは地味な存在だったかも知れませんが、彼らの存在がBelle
& Sebastianのようなバンドを生む手助けをしたのであれば本当に素晴らしいことですし、音楽が継承されていくものであるならばこれほど理想的な継承も無いと言えるでしょう。
そして逆に今の世代の人達からすればBelle &
Sebastianというバンドが先にあり、そこから遡ってFELTを知るという人も少なくないでしょう。そうした人達にとってFELTが今置かれている状況というのは決して芳しいものではありません。だからこそFELTというバンドを知っている者は責任を持ってその素晴らしさを伝えていく必要があると感じたのです。具体的にはクリエイション時代の項のみがBelle
& Sebastianと出会ってから書いたわけですが、自分で言うのも何ですけど他の時代と文章の気合いの入り方が明らかに変わっています。文中に何度も書いている通り、個人的にはクリエイション時代のFELTにはそれほど思い入れは無いのですが、なんとなく背中を押される感じでどんどん力が入ってきたのでした。Belle
& Sebastianというバンドに出会うことによって、これまで長くつきあってきたはずのFELTにまた新しい魅力が加わった、そんな気がしています。
もう一つ、これは何としても声を大にして言っておかなければならないのは、この1年の間に本当に予想もしていなかったくらいに多くの方から「私もFELTのファンでした」といった内容のメールや掲示板への書き込みを頂いたことです。僕はよく冗談半分で「FELTのファンは日本中に10人くらいでしょう」と言っていたのですが、なんのなんの。50人はいそうですね。まあそんな数はともかく、日本中にこれほど多くのFELTのファンが隠れていたこと、そしてそのファンの方々と接する機会を持てたことはこのうえなく嬉しいことで、ほんとホームページ作って良かったよなあと感動している次第です。僕はめちゃくちゃめんどくさがりの人間なのですが、こうしたFELTファンの方々の支援があったからこそなんとかここまでたどりつけたわけです。心から感謝しております。
まあどっちも勝手に自己中心的なヒロイズムに酔っているだけなのですが。
なお、ここで一旦完結するもののもちろんこの先も順次手直ししていく予定です。すでに様々な方から間違い等指摘されている部分もありますし、近い将来ジャケットの画像もアップする予定です。またローレンスがGo
Kart Mozartとして新たな活動を始めたことでもありますし、元メンバー達のソロ活動についてもいずれはまとめていかなければならないと思っています。ですのであくまでもこの完結はとりあえずの完結です。これからも拡大していきたいと思っておりますのでよろしくお願い致します。