Evergreen Dazed
PART 1:チェリーレッド時代

LawrenceはFELTという「バンド」を結成する。英国のインディーレーベルCherry Redと契約を結んだ彼らはデビューシングルを発表。一般的にはここからFELTの歴史が始まると考えて良いだろう。

 Singles
  ・ Something Sends Me to Sleep
  ・ My Face on Fire / Trails of Colour Dissolve
  ・ Penelope Tree
  ・ Mexican Bandits / The World Is As Soft As Lace
  ・ Sunlight Bathed the Golden Glow
  ・ Primitive Painters

 Albums
  ・Crumbling the Antiseptic Beauty
  ・The Splendour of Fear
  ・The Strange Idolos Pattern and Other Short Stories
  ・Ignite the Seven Cannons

 Compilation Albums
  ・Gold Mine Trash
  ・Abosolute Classic Masterpieces

 

Something Sends Me To Sleep (1stシングル)

something sends me to sleep Side A
1. Something Sends Me to Sleep
2. Red Indians

Side AA
1. Something Sends Me to Sleep
2. Red Indians


FELT are;
Lawrence(guitar, vocals), Maurice Deebank(lead guitar), Nick Gilbert(bass), Tony Race (drums)

Produced by John A. Riverse

Released in 1981


と言うわけでFELTの「正式な」デビューシングル。ここで聴かれる音は当時の典型的なネオサイケサウンド。気だるく浮遊感のあるローレンスのボーカルが夢の世界へと誘います。好きな曲の一つではありますがFELT全体の歴史を振り返ったとき、この曲がやや異色だということが分かります。いや、曲というよりがアレンジなんでしょうか。リムショットでビートを刻むドラムって、少なくともチェリーレッド時代では他に余りないと思います。

初期FELTを考える上で欠かせないキーとなるのが「ビート感覚」。先にチェリーレッド時代全体を総括してしまうなら「ビート感覚の希薄だったFELTというバンドがアルバムを経る毎に力強いビートを獲得していく、その過程」と言うことが出来ると思います。だからこそイビツ。このデビュー曲では他のバンド並みのビート感覚を有しているのに、それをFELTは一度完全に捨ててしまうのです。ドラマーの交替という形で。

レーベル表記が良く分からないのですが、とにかく2曲を2バージョンずつ収録しています。
Side 1の「Something〜」以外はこのシングルでしか聴けないバージョンばかりです。
「Red Indians」はセカンドアルバムに再々録音バージョンが収録されますが、やはりそちらの方が完成度は高い。このシングルのC/Wではまだ試作品という感じで、後のバージョンで聴かれる瑞々しさはまだ備わっていないようです。

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Crumbling The Antiseptic Beauty(「美の崩壊」) (1stアルバム)

crumbling the antiseptic beauty(CD) Side 1
1. Evergreen Dazed
2. Fortune
3. Birdmen

Side 2
1. Cathedral
2. I Worship The Sun
3. Templeroy


FELT are;
Lawrence(guitar, vocals), Maurice Deebank(lead guitar), Nick Gilbert(bass), Gary Ainge(drums)

Produced by John A. Rivers

Released in 1983
※上はCDのジャケットです。恥ずかしながらアナログ持っていないのです...


初めて聴いた時、実はちょっと引きました。暗すぎてついていけない、と。かつ余りにも自己満足的な曲作りに、自分はこの音から何を聴いたら良いのか分からなくなってしまった。
でも1曲目の「Evergreen Dazed」は文句無しに素晴らしい。殆ど何のエフェクトもない2本のギターのアンサンブル。淡々と3つのコード(Fmaj7とEmとAm)を刻むギターの上を、トム・ヴァーラインをさらに細くしたような繊細なギターが無言で雄弁に語っていきます。この1曲で「やられた!」と感じた人は少なくないでしょう。
他にもいかにもFELTな名曲「Fortune」をはじめ、ドコドコしたドラムの音にローレンスの呟きボーカルを乗せていくという初期FELTの基本形が既に出来上がっています。このアルバムから参加したゲイリー・エインジのドラムの存在感が素晴らしい。

結果的にはこのアルバムから参加したゲイリー・エインジ(ともちろんローレンス)だけが最終作までFELTに在籍することになります。どうしてもFELTを語る場合には、ローレンスを軸として、前期:ディーバンク、後期:ダフィーとの関係を中心に語っていくことになります。ですがあれだけ拡散していったローレンスの宇宙をずっと支えつづけたエインジの存在感というのは、実はFELTのもう一つの軸だったのだということを、最近になってようやく理解し始めています。

このアルバムはあまりにも「FELT度」が高すぎて逆にファン以外にはつらい内容かも知れません。そこが僕が最初にこのアルバムに対して感じた拒否反応だったのでしょう。でも、FELTの世界にどっぷり使った今となっては、このアルバムを「暗い」の一言では片付けることは出来ません。ある意味、純度100%のFELT世界。

ジャケットで大写しになったこの物憂げな青年(=ローレンス)のモノクロームの表情こそが初期FELTの音を表わしていると思います。キャリアを通してFELTは曲やアルバムのタイトル、言葉の選び方が秀逸でしたが、このアルバムのタイトルもベストの一つでしょう。彼らにはインストナンバーも多いのですが、歌詞が雄弁でない分タイトルで全てをイメージさせる、そういう狙いもあったのかも知れません。(だからこそ私は自分のHPの各コンテンツのタイトルをFELTから取ったりしていたわけです)
私のこのFELTページではシングル・アルバムとも全収録曲のタイトルを掲載しています。FELTの音を聴く機会が無い人でも、是非このタイトルだけでも触れてみて欲しいと思います。そのイメージの広がりを楽しんで下さい。

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My Face On Fire / Trails Of Colour Dissolve (2ndシングル)

trails of colour dissolve Side A
1. My Face On Fire

Side AA
1. Trails Of Colour Dissolove


FELT are;
Lawrence(guitar, vocals), Mick Lloyd(bass), Gary Ainge (drums, bongos)

Produced by John A. Rivers

Released in 1982

「Something〜」で颯爽と登場したFELTでしたが1stアルバム発表時には早くもドラマーが交替。そしてこのシングルでは一時的にディーバンクも脱退。詳しい経緯は分かりませんが、まだローレンス自身も、自分の世界を描き出すための最適なパートナーを探している段階だったのかも知れません。

そういうのが許された時代と言えばそれまでですが、リードギタリストが抜けた直後の、3人編成でいかにもシンプルでインディーな音作り。ただ、例えばこのSideAA:「Trails of Colour Dissolve」のギターや次作「Penelope Tree」でのギターを聴くと、ローレンスとディーバンクのギタリストとしてのフレージングの違いがかなり現れていて面白いです。スネアを殆ど使わない、ビートと呼べるビートの無い世界。ただただローレンスの独白がモノクロームの闇の中から聞こえて来る。

A面曲はチェリーレッドの名コンピレーションアルバム『Pillows & Prayers』にも収録されている彼ららしい陰影を持った曲。このアルバムは80年代を代表する名盤ですが、89〜90年くらいににThe Stone Rosesのアルバムが抜くまではNMEインディーチャートの1位在位期間の記録を持っていたはずです。この曲は後にサードアルバムで「Whirlpool Vision Of Shame」のタイトルで改作されています。AA面はかなり耽美的な雰囲気を漂わせる佳曲。ゲイリー・エインジのボンゴが良い味を出しています。

2曲とも決して取っつきのよい曲ではないけれども初期FELTらしい耽美的サウンドが満喫できます。どっちを本来のA面と考えるか難しいところですが大抵FELTのコンピレーションに収録されたのは「Trails Of Colour Dissolve」の方でした。甲乙つけがたいですけどね。ベースがミック・ロイドにチェンジしてます。

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Penelope Tree (3rdシングル。曲目は12インチ収録曲)

penelope tree Side 1
1. Penelope Tree

Side 2
1. A Preacher In New England
2. Now Summer's Spread Its Wings Again


FELT are;
Lawrence(guitar, vocals), Maurice Deebank(lead guitar), Mick Lloyd(B), Gary Ainge(Dr)

Produced by John A. Rivers

Released in 1983
※上は12インチのジャケットです。


アップテンポの8ビートナンバー。この時期の曲にしては比較的メロディーのハッキリした曲で、サビ部分では珍しくハーモニーまで入る。ポップという意味ではこれまでで一番ポップな曲ですが、一般的に見ればまだまだカルトナンバーと言われても仕方ないような陰鬱さを持っています。ちっとも明るくはない。けれどローレンスのボーカルはこれまでのどんな曲よりも力強い。

まだこの時期はディーバンクが脱けたり再加入したりの繰り返しだったようで、Side 1はディーバンク抜きの3人の録音、B面はディーバンク1人の録音によるインストナンバー。FELTがバンドとして録音したインストナンバーはかなり出来が良いのだけど、それはここでも言えます。Side 2-2は後に2ndアルバムに収録されますが、ここでの音は微妙にこれまでのFELTのサウンドと変わってきています。A面がこれまでのFELTの流れ、B面がこれからのFELTの出発点となっているという点で重要なシングル。

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Mexican Bandits / The World Is As Soft As Lace (4thシングル)

Side A
1. Mexican Bandits

Side AA
1. The World Is As Soft As Lace

FELT are;
Lawrence(guitar, vocals), Maurice Deebank(lead guitar), Mick Lloyd(bass), Gary Ainge(Drums)

Produced by John A. Rivers

Released in 1984

 

The Splendour Of Fear(「毛氈」)  (2ndアルバム)

splendour of fear Side A
1. Red Indians
2. The World Is As Soft As Lace
3. The Optimist And The Poet

Side B
1. Mexican Bandits
2. The Stagnant Pool
3. A Preacher In New England


FELT are;
Lawrence(guitar, vocals), Maurice Deebank(lead guitar), Mick Lloyd(bass), Gary Ainge(drums)

Produced by John A. Rivers

Released in 1984


シングルにもなった「Mexican Bandits」と「The World Is As Soft As Lace」の美しさは絶品。特に前者はインストナンバーですが個人的にはFELT全作品の中でもベストトラックの1つ。シンプルなビートの上を透明感溢れるギターが静かに流れていく。“ギタリストクスイ”にとっては永遠の憧れの曲で、自分もこんな音を響かせたいなと思っています。後者はもうタイトルのすばらしさにやられてしまいます。曲ももちろん最高。

ファーストとの違いを簡単に言えば、ギターの音が変わった。ファーストで鳴っていたのは、ほんと何のエフェクトも無いシンプルなギターの生音に近かった。今作では基本的には生に近いけれども透明感と奥行きが広がっているように感じます。アルバム全6曲中4曲がインスト。でも全くダルさを感じさせません。いや、ダルさはあるのですがそれもFELTの世界として確立しています。そして恐らくこのアルバムはFELT全作品中一番ディーバンク色が強いのでは無いでしょうか。

ギターアルペジオサウンドの好きな人なら必聴。また自分でもギターを弾く人にとってはこのアルバムはアルペジオパターンの宝庫でしょう。ここにアルペジオのすべてがあると言っても過言ではないかも。「音をちりばめて曲を構成する」とはどういうことなのか、その究極の答えを示しているように思います。初期FELTを代表するお勧めアルバムであり、意外にこのアルバムをベストアルバムとする人も多いのではないでしょうか。

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Sunlight Bathed The Golden Glow (5thシングル。曲目は12インチ収録曲)

Side 1
1. Sunlight Bathed The Golden Glow

Side 2
1. Fortune
2. Sunlight Strings


FELT are;
Lawrence(vocals, guitar), Maurice Deebank(guitar), Mick Lloyd(bass), Gary Ainge(drums)

Produced by John A. Rivers
String Arrangement by John A. Rivers and Paul Brook

Released in 1984
※上は12インチのジャケットです。


何と美しいタイトルでしょう。何と美しいジャケットでしょう。そして何と美しい曲でしょう。リズミカルなベースにギターのハーモニクス音が重なり盛り上がっていくイントロはカッコイイの一言。彼らにしては珍しく女声コーラスが入り、サビ部ではストリングスまで導入。この時期を代表する名曲です。

ところが何故かこの曲のこのバージョンはアナログのシングルでしか聴けません。編集盤にも全く収録されていないんですね。せっかくのシングル曲なのに未だ一度としてCD化されたことの無い隠れ名曲になってしまっています。次のサードアルバムに収録されるのですがこれは全くの別バージョンです。あの印象的なイントロが無いですからね。ですので曲だけであればサードアルバムや編集盤で聴けますが、シングルバージョンのCD化を望みたいところです。

当時としてはかなり異色なアレンジだったので彼ら自身も実は気に入らなかったのかも知れません。ですが聴く側にとってみれば文句無しの大傑作。

Side 2-1は1st収録曲の再録(バージョン違い?一緒に聞こえるけど)、2-2はタイトル曲のインスト。プロデュースはジョン・A・リヴァース。チェリーレッド時代のFELTとの仕事はこのシングルが最後になりました。

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The Strange Idols Pattern And Other Short Stories(「彩霞」)(3rdアルバム)

Side 1
1. Roman Litter
2. Sempiternal Darkness
3. Spanish House
4. Imprint
5. Sunlight Bathed The Golden Glow

Side 2
1. Vasco Da Gama
2. Crucifix Heaven
3. Dismantled King Is Off The Throne
4. Crystal Ball
5. Whirlpool Vision Of Shame
FELT are;
Lawrence(guitar, vocals), Maurice Deebank(lead guitar), Mick Lloyd(bass), Gary Ainge(drums)

Produced by John Leckie

Released in 1984

4thと並び大好きなアルバムです。当然ながらこのHPのサブタイトル“Felt and Other Short Stories”はここから取ってしまいました。このアルバムでの顕著な変化はリズム。初めてアップテンポのエイトビートがFELTのアルバムに登場しました。と言うよりもスネア音が登場したのが初めてかも知れない(正確にはその前のシングルからですが)。一般的には「FELTがビート感覚を導入したアルバム」と言われています。

プロデュースはジョン・レッキー。独自の立ち位置(悪く言えば一人よがり)にあったFELTを「ネオアコ」のフィールドに立たせた功労者と言えるかも。ディーバンクのギターが冴え渡る「Spanish House」が個人的にはベストトラック。珍しくメジャーコード展開する爽やかなポップ感覚は「軽快」というこれまでのFELTでは考えられなかったような言葉まで思い起こさせます。

前述の4thシングルもバージョン違い(プロデューサー違い)で収録。シングルほどのインパクトは無いですがアルバムバージョンも決して悪くない。「Crystal Ball」「Dismantled King Is Off The Throne」など代表曲も収録。「My Face On Fire」の改作「Whirlpool Vision Of Shame」は、原作と甲乙つけ難し。どちらもいかにもな世界を築いています。

全体的にビートに乗ったディーバンクのギターが絶妙。前作では「世界」を築いてその中に身を委ねることに快楽を見出していたかのようなディーバンクが、エインジの軽快なビートに気持ちよく乗っかっていっている感じ。またローレンスのボーカルも気持ちよさそう。ルー・リードを彷彿させたりもします。ようやく「バンド」らしさが見え隠れしてきます。相変わらずインストも多いですが音がどんどん整理されてきて聴きやすくなってきています。

曲タイトルやジャケットの雰囲気からこのアルバムは中世ヨーロッパをテーマにしているのかなとも思ったりもしますが、でもやっぱり何も考えてないような気もしますね。

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Primitive Painters(6thシングル)

Side 1
1. Primitive Painters

Produced by Robin Guthrie 1985
FELT are;
Lawrence(vocals), Maurice Deebank(guitars), Gary Ainge(drums), Martin Duffy(organ)
*additional musicians; Elizabeth Frazer(vocals), Marco Thomas(bass)


Side 2
1. Cathedral

Produced by John Leckie 1984
FELT are;
Lawrence(vocals, guitar), Maurice Deebank(lead guitar), Mick Lloyd(bass), Gary Ainge(drums)
Released in 1985

※上は12インチのジャケットです。後ろには映画「時計仕掛けのオレンジ」とP.I.L.の『メタル・ボックス』のポスターが見えます。

 

Ignite The Seven Cannons(「カスピの詩人」)(4thアルバム)

Side 1
1. My Darkest Light Will Shine
2. The Day The Rain Came Down
3. Scarlet Servants
4. I Don't Know Which Way To Turn
5. Primitive Painters

Side 2
1. Textile Ranch
2. Black Ship In The Harbour
3. Elegance Of An Only Dream
4. Serpent Shade
5. Caspian See
6. Southern State Tapestry
FELT are;
Lawrence(guitar, vocals), Maurice Deebank(lead guitar), Martin Duffy (keyboards, b.vocals), Gary Ainge(drums)
*additional musicians; Elizabeth Flazer(vocals on Side 1-2, 5), Marco Thomas(bass)

Produced by Robin Guthrie

Released in 1985


FELTはメンバーの入れ替わりの激しいバンドでしたが、このアルバムでのラインナップは間違いなく最強でした。ローレンス、モーリス・ディーバンク、ゲイリー・エインジの3人に、今作からキーボーディストとしてマーティン・ダフィーが加入、さらに次作からは正式メンバーとしてクレジットされることになるマルコ・トーマスがベーシストとして参加(今作ではゲスト扱い)。チェリーレッド時代を象徴するモーリス・ディーバンクと、クリエイション時代を象徴するマーティン・ダフィーが同時に在籍した唯一のアルバムでもあります。

肝心の内容はというと、残念ながらディーバンクとダフィーの個性を上手く混ぜ合わせようとして混ざりきらなかったという曲も少なくありません。それでもこのアルバムが名作と言えるのはやはり彼らの全キャリアを通じての最高傑作「Primitive Painters」が収録されているからでしょう。当時の4ADの顔とも言えたコクトー・ツインズのロビン・ガスリーのプロデュース、エリザベス・フレーザーの艶っぽいボーカルをフィーチャーしたこの曲は、大袈裟に言えばチェリーレッドと4ADとクリエイションが奇跡的な邂逅を果たした、その歴史的瞬間を捉えていると言って良いかも知れません。シングルのジャケットも素晴らしい(バージョンはシングル・アルバムとも同一)。アルバムの先行シングルとなったこの曲はインディーチャートの4位まで上がったそうで、恐らく彼らのキャリアの中でもピークでしょう。

他にも大好きな「Textile Ranch」など後半のインストナンバーも絶品。この曲でのダフィーとディーバンクのバトルは聴きもの。あとおもしろいのは「Serpent Shade」。前半はキーボード主体、後半がギター主体。今後バンドの主導権をどちらが握るのか、ダフィーとディーバンクの意地の張り合いが伺えます。ややサイケがかった曲もあり、バンドとしてのFELTの引き出しが一気に増えた感もあります。このアルバムでのFELTは意外にも「ロック」してたりするんです。それがカッコイイ。メロディーのハッキリした曲も増えてきました。

結果的にはこのアルバムを最高傑作とする声も多いと思います。うん。それも文句なしでしょう。考えてみればこのホームページのタイトル「Primitive Painters」も日記&掲示板「The Day The Rain Came Down」もこのアルバム収録曲だったんですよね。

 

この時点で一つの頂点を極めたFELTだったがモーリス・ディーバンクが脱退。マーティン・ダフィーの加入により自分の役目がなくなったと考えた上での決断と言われているが真偽は定かではない。またチェリーレッドとの契約切れによりクリエイションへ移籍。FELTの歴史はここで大きな転換期を迎えた。

今となってはクリエイションというレーベル自体がよく知られているので、FELTも「かつてクリエイションに在籍したバンド」として認識されることも多いと思う。だがFELTというバンドの魅力はむしろクリエイション移籍前のこのチェリーレッド時代にあるという人の方が多いのではないだろうか。

 

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チェリーレッド時代のコンピレーションは2種類ある。

Gold Mine Trash

Side 1
1. Something Sends Me To Sleep
2. Trails Of Colour Dissolve
3. Dismantled King Is Off Throne
4. Penelope Tree
5. Sunlight Bathed The Golden Glow

Side 2
1. Crystal Ball
2. The Day The Rain Came Down
3. Fortune
4. Vasco Da Gama
5. Primitive Painters
Side 1-3&5 are unreleased versions recorded in 1984 as demos for Blanco Y Negro records.

Released in 1987

※上はCDのジャケットです。

数年前まではチェリーレッド時代のFELTのベスト盤として定番だったのがこのアルバム。レコードサイズ時代の編集盤なので収録が10曲だけというのがやや寂しいものの選曲は悪くない。シングル曲の大半を網羅していますし、3rd&4thアルバムからのセレクトもあって入門編としては好適。ただし今となっては入手困難かも。

このアルバムの「売り」はやはりSide 1の3&5曲目。クレジットにもありますが、彼らはチェリーレッドとの契約切れに伴いブランコ・イ・ネグロへデモテープを送ったそうです。その音源です。3曲目はそれこそ良くも悪くもただのデモテープなのですが、5曲目はシングルバージョンに近いので「別アレンジ」としての楽しみ方も出来そうです。

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Absolute Classic Masterpieces (a chronological history in reverse)

1. Primitive Painters
2. The Day The Rain Came Down
3. My Darkest Light Will Shine
4. Textile Ranch
5. Sunlight Bathed The Golden Glow
6. Crystal Ball
7. Dismantled King Is Off The Throne
8. Fortune
9. Dance Of Deliverance
10.The Stagnant Pool
11.Red Indians
12.The World Is As Soft As Lace
13.Penelope Tree
14.Trails Of Colour Dissolve
15.Evergreen Dazed
16.Templeroy
17.Something Sends Me To Sleep
18.Index

Released in 1992


1992年に突然発表されたチェリーレッド時代のコンピレーション。すでにCDの時代に移行後の編集盤なので曲数も18曲とオトク。代表曲は大体聴けるので、入門編としてはまずこれでしょう。かつては日本盤も出ていたのですが今はおそらく廃盤。でも輸入盤なら今でも少し探せば手に入ると思うので頑張ってみて下さい。

このアルバムが出たとき世界中のFELTファンが狂喜乱舞したのが、先述した幻の逸品「Index」が収録されたこと。曲自体はほんとどうでも良いものなのですが、とりあえさずローレンスの第一歩がこうやっていつでも聴ける形で残ることになったのは喜ばしいこと。

アルバムタイトルからも分かるように、チェリーレッド時代のラストシングル「Primitive Painters」に始まりデビュー曲「Index」に終わるという、時代に逆行した曲順になっています。意図はよく分からないのですが、FELTがチェリーレッド時代で解散したならまだしもバンドとしてはまだこの先続いているわけで、そんな中途半端なところから遡ってもなあと思います。まあ選者の気持ちとしては1曲目に「Primitive Painters」を持ってきたかったのかな?

5曲目は残念ながら今回もアルバムバージョン。このコンピレーションがいわば「決定版」のような形で出されたので、しばらくはコンピレーション盤はリリースされないと思います。同曲のシングルバージョンが今後CD化される可能性は極めて低いかも。

9曲目はギタリストのモーリス・ディーバンクが1984年に出したソロ・アルバム「Inner Thought Zone」収録曲です。

歴史を逆行した曲順はスタート位置が中途半端なためにあまり意味をなしませんが、それでも後半に行くに従ってどんどん「骨」だけになっていく様子は面白いものがあります。つまりFELT自身はキャリアの中でどんどん肉付けをしていったということですね。

なおこのコンピレーション再発に伴い「Primitive Painters」がシングルカットされました。その際のカップリングは『Gold Mine Trash』収録のデモ音源2曲。それはそれで貴重だから良いのです が、どうせならオリジナルの形で再発した方がファンも喜んだのではないでしょうか。

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最後に1999年10月現在のチェリーレッド時代音源の発売状況について。まず日本盤はすべて廃盤です。CDでは1992〜1993年頃に『クラシック・マスターピーシズ』が発売され、その流れから3rdと4thがCD化されています。比較的最近の話ですから、ロクに在庫整理をしていないような地方のレコード屋では新品を入手出来るかも。また中古でも時々出回ってるようです。2ndシングルを収録したチェリーレッドレーベルのコンピレーション『ピロウズ&プレイヤーズ』は恐らく今でも入手可能だと思います。

輸入盤状況。CDについては、以前は1st&2nd、3rd&4thをそれぞれカップリングしたものと『Gold Mine Trash』がCD化されていました。とりあえずジャケットもミニサイズながらもオリジナルを使用していたこの仕様のCDは次第に見かけなくなってきました。『Absolute Classic Masterpieces』発売に伴って旧譜の整理が行われたようで、1st&2nd、3rd&4thのカップリングCDが復活しました。ただしジャケットが変わってしまって、無地にタイトルを書いただけの非常に味気ないものになってしまいました(同時期にクリエイション時代のアルバムも整理されたようで、こちらもデザイン統一で味気ないものになりました)。とは言えこの仕様のCDですら最近はあまり見かけなくなって来ました。興味を持たれた方は早めにゲットしておいた方が良いでしょう。

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